2020.08.17

【連載#4】社会人3年目に聞いてみた「やりたいことを仕事にするって綺麗ごと?」

人生の半分以上を費やすことになる「仕事」の時間。それだけ多くの時間を割くにもかかわらず「やりたくない仕事」を選んだという人の声も少なくない。

特に日本の場合、仕事をやめにくい・転職しにくい文化が存在することから、長期間、仕事で偏ったストレスが蓄積され、からだに悪影響が出てしまうケースもある。そうした背景から、僕のまわりでも、仕事は「義務」でしかなく「自分がやりたいことをできるものではない」という認識を持っている人は増えているように感じる。

今回は「やりたい仕事」「やりたくない仕事」の両方を経験してきた、大手インフラ系企業3年目の吉住さんに話を聞いてみたい。割り切って、どれだけネガティブな理由でも仕事をしている人も、環境が変わればどれだけ仕事が人生にいい影響をもたらすものになるのか、そしてそうした仕事を実現する方法を、この記事を通して知ってもらえたらと思う。



◼︎プロフィール
吉住博樹(よしずみ・ひろき)

2018年大手インフラ系企業入社。
社内では、スマートシティや大阪・関西万博関連業務等に携わる。
引越し好きな母の元で育ち、関西内で10か所近くの転居を経験する。幼少期に母子家庭で育ったため、各地域でご近所さんに食事・遊び等でお世話になり、母子ともに家族のように育てて頂いたバックグラウンドがある。
その恩返しとして、関西に住む子供たち、大人たちに「安心・安全な暮らし、未来にワクワクできる暮らし」を提供することを夢に現会社に入社。




中西:これまでの連載では「なぜ僕らは働くのか」という問いに、さまざまな仕事観を持った方との対話を通じて、自分なりの解を見出そうとしてきました。僕は「楽しくなければ仕事ではない」と考えているのですが、そう思っていない人も多いみたいで。

それは理想論、やりたくないことをやるのが仕事という考え方を持ちながら、無理やり働いているのを見るとすごく苦しくなります。そこで彼らと同じような立場を経験しつつも、やりたいと思える仕事を実現させた吉住さんのお話を聞くことで、そうしたネガティブな環境を脱するヒントが得られるのではないかと思っています。よろしくお願いします。



吉住:よろしくお願いします!はじめましてですね(笑)

私はスマートシティや大阪・関西万博関連業務に携わっています。具体的には、万博における弊社の企画・提案の取りまとめであったり、関西エリアを地域住民にとってさらに魅力的なまちにするための手段として、どのようなスマートシティが必要か、そのスマートシティでは弊社はどのような貢献ができるのか、といった方針策定を行ったりしています。



中西:インフラ企業ならではのスケールの大きな仕事ですね…。入社される前からそういったポジションを希望されていたんですか?



吉住:そうですね。地域の魅力づくりに、現場と近い距離で携わりたいと思っていました。

また、就職活動時から弊社の先輩社員に憧れていて。会社員でありながら、過去には劇場のプロデューサーとして働いたり、今でもカフェを経営されたりしている人なんです。

大きな組織に所属しながらも、関西を活性化させたいという想いとやり方の強さに魅力を感じました。最近になって憧れのその社員と同じ部署に配属され、自分の「やりたいこと」をやらせてもらえています。


チャンスを外に求めた2年間



中西:吉住さんは、現在の部署に配属される前、どちらかというと「やりたくない」仕事に就かれていましたよね。詳しく教えてもらってもいいですか?



吉住:入社して今まではずっと製造所で技術検討をしていました。1年目は労働時間も長くなく、口では冗談で「嫌だ~」と言えるくらいで嫌だと言いながらもストレスを大きくは感じていなかったのですが、2年目こそ激務になって(笑)

口では逆に大丈夫と言いながらも、なかなか好きになれないことを無理に好きになろうとして苦しみ、自分の感性が失われて行っているのではないかという「怖さ」に近い感覚が強くなりました

2年目は企画系の仕事が多く、社外の方とも関わることが増え、ここで得られたことが自分のやりたいと思っている「地域の活性化」にどう繋げられるか、ということを念頭に置きながら仕事していましたね。それでも悶々とする苦しい日々は続きました。

出張の合間に視察した商店街の中のチャレンジショップ



吉住:耐えられてあと1年、それでもダメなら転職しようかと思っていました。2年も会社にいると、憧れていた先輩社員さんの存在がいかに希少だったのか、自分のやりたことを実現するために組織を動かすことに対して、いかに自分が無力であるかがどれほど難しいのか。理想と現実のギャップに苦しみましたね。



中西:なるほど…。そんな中でも今の部署に配属された秘訣はなんだったんですか?



吉住とにかく部署外、社外の人との関わりを増やしたことですね。

休日を使って憧れの社員さんの携わる朗読劇を見に行って勉強したり、社内の新規事業コンペに応募して成果を出したり。上司や人事にも自分がやりたいことを伝え続けていました。その結果、少しずつ現在の部署からイベント等で声をかけてもらえるようになり、積み重ねの結果、人事からの評価も集まってきました。本当に感謝しています。

当時は、自分の部署だけだと、夢を叶えるための力をつける十分なチャンスも、それを評価してくれる軸人もいないので、ここから一生抜け出せないと焦りを感じて。今思えば、本当は上司も同僚もすごく気にかけてくださっていたのですが、当時の自分は焦りが強くて余裕がなかったのもありました…。

入社して意図しない部署に配属されたときは、流石に正直ガッカリしましたし、希望の部署にいくには10年かかると言われて沈みましたが、いきなり1年目から憧れの社員さんのところに行って力になれる自信がなかったんですね。だからとりあえずは頑張って、会社のためになることをしようと思いました。


原動力になった現場の「リアルな景色」



中西:なんとしてでも夢を叶えたいという吉住さんの執念を感じます…!そこまでの想いを最初に持てたきっかけはなんだったのでしょうか?

現在の部署に配属される前の吉住さんと、同じような状況の人はいると思うのですが、そもそも自分自身に「強い意志がない」と考えている人も多いような気がしていて。



吉住:就職活動が大きかったですね。過去を思い返すと引越しと転校が多い幼少期だったのですが、それでもうまくやってこられたのは、親はもちろんのこと、地域に住む友だちや近所の方のサポートがあったからだと感謝する機会が多かったんです。

そんな関西を次の世代の子どもたちにも引き継いでいくために、地域を長期にわたって、責任を持って支えていくバックアップするような会社を選ぼうと決めました。



中西:僕も関西出身ですが、確かにご近所の方の人情味の厚さに救われてきたことがたくさんあるなと感じます。

今のお話のように、僕のまわりでも就職活動時には吉住さんと同じように、過去を振り返り自分の将来設計を考えていた人が多いように感じました。

それでも、進路が明確にできる人、そうでない人の差はあると思っていて。それが良いか悪いかは別として、吉住さんがどうやって志望動機をはっきりさせたのかが気になりました。



吉住:ぼんやりと地域活性化がしたいなと思ったタイミングから始めた兵庫県・尼崎市でのボランティアがきっかけですね。正直、はじめのうちは「就職活動を有利にしてやろう」くらいに思っていました。ところがその活性化プロジェクトのリーダーをされている方の講演会に行って、自分のよこしまな気持ちが恥ずかしくなって。

なぜ尼崎に恩返しがしたいのか、20年後、30年後に尼崎をどういう街にしていきたいのかといった想いが伝わるプレゼンを聞いたんです。自分の時間や命を削って地域を活性化しようと奮闘するその姿に引き込まれました。

何より、その講演会に参加していた地元の方達の顔がキラキラしていたのが印象的でした。イベントが終わった後には、みんなで地域のために何ができるかと熱量高くアイデアを出し合われていて。

みんな楽しそうだし、もっとこういう活気あふれる場を増やしたい!自分が欲しいのはこの光景だ!と確信した瞬間でした。 講演会が終わるとすぐ、その方に「ボランティアでいいので勉強させてください!」とお願いしに行っていましたね(笑)

ボランティアスタッフとして参加したワークショップ



中西:そう言われると、志望動機は考えても、就きたい仕事に携わっている方の現場やお客さんの声といった光景を実際に見ている人は少ないのかもしれませんね…。


休日でストレスを発散するよりも、いかに平日を彩るか



中西:では夢だった部署の仕事をすることができた今、プライベートも含めご自身の気持ちや環境に変化はありましたか?

吉住:めちゃくちゃありましたね。

やはり今まで休日や空いた時間を使ってやっていた街づくり・地域活性化の活動が業務時間を使ってできるということが大きいです。何より、地域活性化という同じ志を持った同僚がいることが凄く幸せです。また、お金も部署内のものを使えますしね。笑

時間の使い方もいい意味で、仕事とプライベートの境目がなくなりました。実務時間、プライベート時間、両方でやりたいことをするという感じです。街づくりに携わっている人は、平日・休日関係なく会ってくれる人も多いので。

とはいえ新しく家族もできたことで、学生時代のように、すべての時間を自分の思うように割くことはしませんが、その分、業務時間内で捌けることはきっちり終わらせるという意識もつきました。



中西:以前この連載でも取りあげたのですが「休みの日を使ってでもやりたいと思えることでないと仕事にするのは難しい」ということを思い出しました。



吉住:僕は人間そこまで器用じゃないんじゃないかと思っていて。平日の自分、休日の自分とはっきり切り分けられないのではないかと。

過ごす時間は圧倒的に平日の方が多いわけだから、仕事のストレスを休日で全部発散しようとするよりも、いかにして平日の時間を彩あるものに変えていけるかを考えた方が無理がないと思うんです。そのためにこれまで行動してきた、という感覚もありました。

やりたくない仕事も、一周回って「今の環境を頑張ろう!」と割り切れるならいいのですが、そこまで強靭なメンタルの人はあまりいないような気がするんです。一見大丈夫そうにみえても、長い目で見た時にどこかで無理が生じてくるように思えます。

大きくなっても楽しく生活できる関西を引き継ぐからね、と息子に決意するパパの顔


溶けていく仕事とプライベートの境界線



中西:確かに…。やりたい仕事がきちんとできることって、日常の多くの時間をより充実させることですもんね。当たり前のことだけど、なんだか新しい視点でした。仕事が楽しいと思れば、結果的にプライベートの時間の過ごし方も変わってきそう。

最後にお聞きしたいのですが、仕事の充実度合いは人生にどのくらい作用すると思いますか?



吉住:気持ちとしては100%に近いと思います。僕には家族がいますし、家族から受ける影響ももちろん果てしないのですが、広い意味で考えると家族との時間も「仕事」なんですね。僕のやっていることは「地域の活性化」です。

地域の中心には子どもや親、大人といった「家族」がいる。だから僕にとっては家族も「お客さん」ですし、仕事を頑張ることが結果的に自分たち家族のライフスタイルをよくすることに繋がるんじゃないかと考えています。

そして自分の夢の実現には、いろんな人の力を借りることが必要。子どもたちに、自分が育ってきた関西という地域の魅力を受け継いでいくためには、仕事という、本格的に「家族以外の人と繋がる手段」が大切になってくるのだと思います。



中西:なるほど…!吉住さんのように、いい意味で仕事とプライベートの境目がなくなっていく人はこれからもっと増えていくのかもしれませんね。

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